感染性疾患を撲滅することではなく、多くの動物達が出入りする過密状態で、様々な感染性疾患の拡大を防ぎ、リスクの高い患者とまだ感染症に罹患していない動物の健康を維持すること。
※シェルターに来る動物は経歴が分からないことがほとんどなため、どの動物もワクチン未接種とみなします。
すべての犬や猫に接種するように勧められているワクチンのこと。
以下のような点に基づいて判断されています。
その感染症に対する危険性が予想される場合や、動物の生活環境で感染性因子に暴露される危険性が想定される場合に推奨されます。
例:猫白血病ウイルス感染症、猫エイズウイルス感染症など
シェルターにおける猫のワクチンは、通常3種混合を用い、防御の発現が早く、母親からの移行抗体があっても効果の認められる弱毒生ワクチンが推奨されます。
3種は以下のコアワクチンになります。
猫ヘルペスウイルス 猫カリシウイルス 猫汎白血球減少症
対象となるウイルスや細菌の毒力を弱めたもの。
生体内でウイルスや細菌が増殖して免疫を誘導する。
死滅させたウイルスや細菌、不活化した毒素を用いたもの。
免疫を誘導できる免疫原性は保持している。
いくつかありますが、シェルターでの使用を避ける最大の理由は・・・
つまり・・・
ワクチン未接種の動物に防御が確立するのに、約5週間かかってしまう!
※動物の出入りの激しいシェルターでは、ワクチンで防御する前にほとんどの動物が疾患に暴露されると考えます。感染力が強く致死性の高い病気(猫汎白血球減少症など)がいつ入ってきてもおかしくない環境において、免疫獲得までに5週間もの時間をかけている余裕はありません。
一般的には母親からの移行抗体がなくなる時期が生後8週齢〜14週齢頃になりますので(感染危険期)、8週齢頃に1回目のワクチン接種を行い、生後12週齢頃に2回目の追加接種をします。移行抗体のレベルが高いとワクチンウイルスが中和されてしまい、効果がないことがあるためです。逆に言うと、ワクチンをしなくても移行抗体で防御されていることを意味します。ただし、実際には移行抗体の有無や抗体価を測定することは現実的ではなく、母親の免疫状態も不明な場合が多いため、初回ワクチン接種は8週齢前後で行うことが推奨されます。
母親がワクチン未接種の場合は移行抗体の影響を考慮する必要はありませんが、子猫にいつから抗体産生能力が出てくるかが問題になりますので、産生能力のある生後6週齢〜8週齢頃にワクチン接種を行うことが有効です。
※いわゆる高力価の生ワクチンは、低い抗体価の移行抗体があってもそれを乗り越えて感染し、ワクチン効果を発揮するとされています。そのため4〜6週齢でのワクチン接種が可能です(当シェルターではこのタイプのワクチンを使用しています)。
※生ワクチンは妊娠猫や4週齢以下の子猫への接種は避けることが基本ですが、シェルターのような多頭飼育の環境では感染のリスクが高いため、4週齢から複数回(4,8,12週齢)接種する必要があります。