※FIPに関してはまだ解明されていないことが多く、様々な研究が行われている状況です。このページでは2010年3月現在で調べた内容を示してあります。新しい情報を入手次第更新していく予定ですので、ご了承ください。
コロナウイルスが突然変異したものがFIPウイルスですが、『コロナウイルスを持っている=確実にFIPを発症する』ということではありません。
コロナウイルスは感染してもほとんどの場合が無症状なため、自分の飼い猫が感染していることを知らない人が大半と思われます(感染状況を確認するには動物病院での血液検査が必要です。FIPウイルスそのものを検出できる検査はまだありません)。
コロナウイルス科、コロナウイルス属、猫コロナウイルス(Feline coronavirus: FCoV)
猫コロナウイルスには2つの型があり、さらにそのいずれにもそれぞれ2つのバイオタイプというものが存在します。これらは形や遺伝子レベルなどでも区別することが出来ず、猫に感染した場合の病原性のみが異なります。
猫に対してほとんど病原性を示さず、腸管に感染するウイルス。
感染により、軽度な下痢などを示す。無症状なことも多い。
猫に対して強い病原性を示すウイルス。
FIPを発症させる。
FIPウイルスは猫コロナウイルスですが、猫がFIPウイルスに感染して発病するのではなく、猫コロナウイルスに感染した一部の猫がFIPを発症するといわれています。(その理由はまだ完全には解明されていません)
FCoVは排泄物からの感染が容易に成立するため、多くの猫間でこのウイルス感染が広がっていると思われます。また、野外生活を送るいわゆる野良猫も、まずこのウイルスを持っているとみなしたほうが良いでしょう。家庭内飼育猫であっても、かなりの確率で高い抗体価を持っています。
FCoVは通常は他の猫に感染しても重篤な病気を引き起こすものではなく、血液検査上の抗体価の上昇が認められるだけの場合がほとんどです。つまり、「高いFCoV抗体価=FIPではない」ということになります。
病原性の低い(弱毒)FCoVは、糞便を介し、容易に口や鼻から他の猫へ感染していきます。感染は通常一過性で終結し、時間の経過と共に抗体価も下降していきます。
病原性の低いFCoVに感染した一部の猫の体内で、このFCoVから突然変異でFIPVが発生するといわれています。(現時点では、FIP発症猫から他の猫へのFIPV感染の可能性は低いとされています)
いまだ詳細は不明です。免疫抑制を起こすFIVやFeLVなどのウイルス感染や、生活上でのストレスが強く関与していると考えられます。
※この場合の『ストレス』とは『猫にとってのストレス』です。これはあくまでも『猫が感じるもの』なので、何がストレスになるかは各猫によって違うため、限定して述べることは出来ません。
つまり、FIPという病気は・・・
発症には、強毒FIPVが体内で生まれること以外に、猫の免疫系の異常が起こることが条件であると、現時点では考えられています。
FCoVの発生を防ぐためには、まず飼育予定の猫がFCoV陰性であることを検査で確認して、陽性猫を飼育環境内に入れないことです。1匹でもFCoV陽性の猫がいたら、同居の猫にすみやかに感染が拡がるでしょう。
FCoVは猫の体外では不安定なウイルスで、室温では数分から数時間で感染性を失います。このウイルスはほとんどの消毒薬に対して感受性を持っており、環境中の消毒は一般的なアルコールや次亜塩素酸などの使用が有効です。
※タンパク(糞便中の物質)によりウイルスが保護されている場合には、3〜7週間は環境中で抵抗性を持つとされています。弱いウイルスだと油断せず、こまめな掃除と消毒をしっかりと行うことが肝要です。